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小中学生の間で深刻な問題となっている 「ゲーム依存」をご存じでしょうか。以前は、夜遊びで警察のお世話になる非行少年がいましたが、近年はゲーム依存で日常生活に支障をきたす子供が増えています。

親御さんにはゲーム依存の知識を深め、大切なお子さんのゲームに対する向き合い方を見直すことが求められています。今回は、ゲーム依存の児童サポートに長年携わり、「ゲーム依存」に関する書籍も出版している、伊藤幸弘塾塾長・佐野英誠(さの ひでのぶ)がゲーム依存について解説します。

 

ゲーム依存とは?

ゲーム依存とは、ゲームにのめり込みすぎてしまうがあまり、生活する上で他のやるべきことがないがしろになってしまう状態のことで、国際疾病に正式認定されています。

WHO(世界保健機関)は2019年5月に「ゲーム障害」として国際疾病に正式認定しています。ゲーム障害とは「ゲームをする時間をコントロールできない、他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先するなどといった症状が、1年以上継続すること」とされています。症状が重いケースでは、症状が1年以内でも該当します。

引用元(日経新聞):https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45280950V20C19A5MM8000/

引用元(国民生活センター):https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201910_02.pdf/

WHOでは、ゲーム障害を以下のように定義しています。

  • ゲームをする時間や頻度を自ら制御できない。
  • ゲームを最優先する
  • 問題が起きているのに続ける。
  • 上記状態が1年以上続き、社会生活に甚大な支障が出ている。

 

小中学生のゲーム依存におけるデータ

厚生労働省によると、オンラインゲームや動画サイトなどを含む「ネット依存」が疑われる中高生は、日本全国で93万人いると推計されています。 また、2019年に行われたゲーム障害に関する初の実態調査(厚生労働省の補助事業として、国立病院機構久里浜医療センターが実施)では、10代・20代の18.3%が平日でも1日3時間以上をゲームに費やしていることが明らかになっています。

 

小中学生のゲームにおける実態

現代の子供たちの生活からゲームを切り離すことは不可能と言っても過言ではありません。
小中学生におけるゲームの現状を見ていきましょう。

・「終わりなきゲーム」の出現が依存を助長する

ゲーム依存の小中学生増加の理由として、ゲームコンテンツの変化が挙げられます。

佐野塾長「僕達の時代ではファミリーコンピューターが流行っていました。当時のゲームはクリアという終わり(ゴール)がありましたが、現代のゲームは追求すればするほど、周りから注目されたりランキングに載ったりする”終わりなきゲーム”です。オンラインを経由し、友人とつながることで止められなくなるなど、依存性が高まっています」

小学生のプレイするゲームのランキングは以下のようになっています。(「ゲムトレ」2020年5月調べ)

1位.『フォートナイト』
2位.『マインクラフト』
3位.『あつまれ どうぶつの森』

『フォートナイト』はインターネットを通じて、仲間と通話をしながらプレイするバトルゲームです。ゲームコンテンツ自体に明確な終わりがなく、没頭してしまうケースが多く見受けられます。

・”ゲームの強さ”でクラスの人気者に、小学生に起きた衝撃の変化

佐野塾長「学校のクラスでは、ゲームが強い子のパワーバランスが上になってきていると感じます。体感ではクラス24人のうち、21人がフォートナイトをやっている印象です。父親が月に3万円ずつ課金してくれる子は、周りから『凄い』と称賛されます。昔はスポーツ万能で足が速い、サッカーで活躍している子のパワーバランスが上でしたが、それも変化していると感じます」

最近の子供は日常生活における感受性が強く、心が繊細な傾向にあります。プライドが高い、気が弱い、感受性が強い子は不登校気質と言われますが、友人と仲直りができずに学校に行けなくなってしまい、その行く先がゲーム依存ということも多いです。現代ではゲーム依存と不登校の結びつきは強いと言えます。

 

ゲーム依存による害

ゲーム依存による害は、不登校になるだけではなくさまざまです。下記に具体例を紹介します。

・ひどい言葉を使い、人格が変化してしまう

バトルゲームを日常的にプレイする子供は、過激な言動になってしまいます。

佐野塾長「死ねという言葉が『おはよう』くらいの感覚で出てくるようになります。親が子供に『きもい死ね』と言われてしまい、ダメージを受けてしまうことがあります。”台パン”という全国共通用語があります。ゲームでうまくいかなかった際などに、台や壁を叩いてしまうものです。気性が荒くなり、感情のコントロールがかなり効かない状況は危険ですね」

最近流行りの「フォートナイト」「荒野行動」「エイペックス」は”人格を変えるゲーム”とされており、お子さんの自覚がないまま人格が変わってしまうケースも少なくありません。

・過度な課金を繰り返してしまう

過度な課金が問題となるケースも増えています。前述の通り”終わりなきゲーム” の出現により、あらゆる手段を駆使してゲームで強くなることを求めてしまう子供が増えています。

ひと昔前のゲームは、一度ソフトを購入すれば遊びつくすことができました。一方最近のゲームは無料で始められますが、有料で強いアイテムを手に入れることで、より楽しく遊ぶことができます。ゲームに終わりがなく一度課金すれば「もっと欲しい」という精神状態になってしまい、過度なお金を使ってしまうことになります。親も子供に好かれようと、課金を許可してしまうケースも見受けられます。

日常生活や健康に支障が出る

ゲームで得られる刺激があまりに強いあまり「日常生活がつまらない」と感じてしまい、日常生活に支障をきたしてしまいます。

健康面では、睡眠障害や頭痛、目を使いすぎることによる視力低下などの害が生じます。ゲーム以外のことに関心がなくなり、気分の浮き沈みが激しく、落ち込んだりイライラします。無気力状態が続くことも増え、 ひどい場合はうつ病を発症してしまうケースもあります。

 

ゲーム依存の診断方法は?我が子の危険信号を見逃すな

前述の通り、ゲーム依存(ゲーム障害)には明確な基準が定めされていますが、親御さんは危険サインに気づかないケースも多いです。親御さんにできる診断方法は「子供のゲームとの向き合い方を観察し、依存性が疑われるか」をチェックすることです。ゲーム依存に関連する症状が見られた場合は、早い段階での改善が求められます。

佐野塾長「食事中にゲームに夢中になり『声をかけないで』と強い口調で言われる。ゲームに夢中になり、就寝時間が12時や1時になる。これは危険信号です」

危険信号をそのまま放っておくと、取り返しの付かないことになってしまいます。「風呂に1カ月間も入ることができない」「長い間爪を切っていないために、爪が丸まって痛む。靴を履くこともできず、病院にいってしまう」など重症化してしまうケースも。時として、ゲームは子供の心や生活をむしばみます。「たかがゲーム」と侮らないことが重要です。

 

ゲーム依存を止めるためには

ゲーム依存を止めるためには「家庭のルールを徹底すること」が大切です。ゲームに対する時間制限や生活習慣の是正、ゲーム課金への向き合い方などさまざまな対策が必要です。

しかし、現代の子供は “親との駆け引き”を覚えています。親の言葉に対してリアクションせず、強く諭すと「うるせえ」と言い返し、全く口をきかない。その言葉を受けた親は、子供に嫌われたくない思いから黙ってしまうこともあります。

佐野塾長「『親にこう言えば、ゲームをやらせてくれるし、学校に行かなくても平気』などといったある種の成功体験をしてしまいます。その習慣が重なり、だんだんと歯止めがかからない状況に陥ってしまいます」

子供のゲーム依存に対して「解決の手段がわからない」「歯止めが効かずどうしていいかわからない」「ゲームを止められると暴力を振るわれてしまう」などといった悩みを抱える親御さんが増えています。

フリースクール伊藤幸弘塾では、そのような親御さんとお子様にサポートを行なっています。お子様に合わせたカリキュラムを作成し、家庭に近い環境での共同生活を行います。児童の自主性を育み、生活リズムや学業意欲向上を心がけ、ゲームとの適切な向き合い方や不登校を改善。ゆくゆくは社会復帰・学業復帰を目標とします。

佐野塾長のメッセージ

「これまで私は、約1300人のお子さんの部屋に入り『人生変える決断』の後押しをしてきました。中には包丁を出してきたお子さんもいましたが、愛を示して、お子さんに変わってもらうきっかけを作ってきました。不登校のお子さんを見て見ぬ振りする方もいらっしゃいますが、大切なお子さんを幸せな方向へ導くために、変わるきっかけを作って欲しいです。私は17年間携わってきており熱意を込めて伝えたら、子供達の心を動かせる自信があります。ぜひ勇気を持って相談をしていただきたいです」

・佐野英誠(さの ひでのぶ)塾長プロフィール

母子家庭で育ち、いじめ、不登校、引きこもりを経験するが、小中高の7年間はバスケットボールに打ち込む。高校2年生でコーチとのトラブルで退学、その後は喧嘩に明け暮れ、暴走族やチーマーとして荒れた生活を送る。26歳の時、新幹線で近くに座っていた教育カウンセラーの伊藤幸弘と運命的な出会い。修行を積み、2017年に伊藤幸弘塾塾長となる。以降は不登校、引きこもり、ゲーム依存、スマホ依存、ネット依存の子どもたちを、365日24時間体制の全寮制で支援し、家族関係の再構築をサポートしている。21年には、自身の経験を踏まえた書籍『ゲーム依存から子どもを取り戻す』を出版、Amazonランキング1位を獲得した。

書籍:佐野英誠『ゲーム依存から子どもを取り戻す』